スマホ脳

おすすめ本

 私たちの日常にすっかり欠かせないものとなったスマホやiPad。これらが人間に、とりわけ子供や若者にどんな影響を与えるのか皆さん一度は考えたことがあるのではないでしょうか。

 2021年4月に行われたiPhoneユーザ1300名を対象とした調査では、スクリーンタイムの最頻値が5時間半、平均値はおよそ7時間という驚異的な数字が報告されました。
(スマートフォン利用に関する生活者実態調査:https://creatorzine.jp/news/detail/1937)

 もう使わないわけにはいかないのだけれど、こんなふうに使っていて長期的な悪影響はないのであろうか、と心配するに足る数字かと思います。

 そんな心配に回答してくれるのが、2019年に世界的なベストセラーとなった「スマホ脳」です。

 本著では、スマホが如何に有害でありうるかということを示した上で「人間の進化のプロセスを考えるとそれは自然なことだから、意識的にスマホとの付き合い方を改善していく必要がある」といった内容になっています。

 以前より集中力が落ちた、ストレスを感じやすくなったという人は、本著を読んで本来の自分を取り戻してほしいという著者からのメッセージもあります。

1. 著者について

2. スマホの悪影響について

 今回は本著で語られているスマホの悪影響の中から、以下の4つを取り上げたいと思います。

①集中力 ②睡眠 ③うつ病 ④教育

 どれも人生に対する影響力が大きいものです。

 本著の記述として一貫しているのは、これらに悪影響がある原因を脳の構造から説明している点です。

 直感的には何となく、スマホ漬けの生活をしていたら、集中力がなくなって睡眠不足になりそうだなと思うかもしれませんが、そのメカニズムを掘り下げていきたいと思います。

2.1 奪われる集中力

 集中力の話に入る前に、まずは集中力と切っても切れない関係にある「マルチタスク」から話を始めたいと思います。

Ⅰ. マルチタスクの被害

 マルチタスクとは複数の仕事に並行して取り組むことです。身近な例で言えば、通話しながら料理をしたり、テレビを見ながら食事をしたりなど、我々の日常とも言える振る舞いになります。

 このマルチタスクを好む人は、集中力がなく、重要ではない情報を選別して無視することができないということが言われています。

マルチタスクをしているときは…
並行して作業をしているつもりでも、実際にはそれぞれの作業を高速で切り替えているだけで、脳は前の作業状態のまま切り替われていないということがほとんどである。

 これ自体は何となく腑に落ちると思いますが、ではなぜ Q1. 非効率なマルチタスクは蔓延しているのでしょうか。

 それはA1. マルチタスクをすると脳がドーパミン(満足感を感じさせ、それをしたいと思わせる物質)を分泌するからです。

 何とも解せない話ですが、Q2. なぜ脳にとって非効率なマルチタスクがドーパミンを分泌してしまうのでしょうか?

 それはA2. 集中を分散させ、現れるものすべてに素早く反応することが、人口の半数が10歳前に亡くなるほど危険だった時代に、極めて重要だったからだと言います。

 周囲に気が散っている状態でないと、外敵から襲われた時に生存できないと言うことです。これが現在の社会状況(突然猛獣に襲われることのない比較的安全な環境)とアンマッチしているために悪影響を被ってしまいます。

Ⅱ. マルチタスクとスマホ

 ここで話をスマホに寄せていきたいと思います。

 マルチタスクとスマホの関係性は言うまでもなく、スマホがマルチタスクの温床であるという点に尽きます。

 スマホが誘発するマルチタスク
ポケットに入れておけば、もしくは一度ホーム画面を開けば、無数の通知が私たちの注意を惹きつけ、1端末に無数のアプリをインストールでき、できることは無限。SNSを開けば、スクロールが止まらなくなるといったように、他の作業とのマルチタスクを誘発する上に、1端末内でも恐ろしいほどのマルチタスクができてしまう。

 これにドーパミンが分泌されてしまうとなると、半ばお手上げのようにすら感じてしまいます。

 この強烈な影響力を示した以下のような実験が本著で引用されていました。

 脳が無意識に集中すべき対象を決めていると思うと恐ろしいですね。このことに関する対策は「3. どうすれば悪影響を抑えられるか」で取り上げたいと思います。

2.2 妨害される睡眠

 続いては睡眠についてです。

 精神科医として活動している著者は、患者を見る中で、よく眠れない人が増えていることが特に気になると述べています。著者のいるスウェーデンでは、3人に1人が自分の睡眠に問題があると感じていることも明らかになっているようです。

 理論的には、スマホから受けた刺激はストレスとなり、脳が眠りを促進する物質を分泌することを妨げるように働いてしまうために、睡眠に悪影響が出ると言われています。

 また特に夜間のスマホの使用はブルーライトを浴びることとなり、これにより脳が今は昼間だと錯覚してしまい、眠りにつきにくくなる効果もあるとのことです。

 これらの理論が本当かどうかを調査した事例が、下記の通り本著でささやかながら紹介されていました。

 これは実体験として最も納得できるところだと個人的には思っています。

 自分も学生の頃は、寝る前にベッドでYoutubeを見ることが多く、ベッドに入ってから眠りにつくまで数時間かかることもありました。

 それを、寝る2時間前から電子機器を見ないようにするようにした結果、今では入眠まで5分程度と劇的に状況が改善しました。

2.3 進行するうつ病

 続いてはうつ病に関してです。うつ病の原因は多岐にわたると思いますが、今回はスマホの影響、とりわけSNSの影響に着目します。

 2000人近くのアメリカ人を調査したところ、SNSを熱心に利用している人たちの方が孤独を感じていることがわかったそうです。

 以前「なぜ私たちは孤独なのか?」という本の紹介でも取り上げましたが、ここでのキーポイントは「私たちはSNSによって自分は社交的だ、意義深い社交をしていると思いがちだが、実際は現実の社交の代わりにはならない」という点です。

 上記の根拠として、対面の人間関係に時間を使うほど幸福感が増す一方で、Facebookに時間を使うほど幸福感が減っていたことが研究によって明らかになっています。

 SNSを使用することで孤独を感じる原因までは明確になっていませんが、可能性としては、皆がどれほど幸せかと言う情報を大量に浴びせかけられ自分は損をしている孤独な人間だと感じてしまうことが考えられているようです。

 孤独だけでなく自分に対して劣等感を抱くきっかけにもなることが、以下のような研究で示されていました。

2.4 抑制される教育

 最後に教育についてです。スマホが子供の教育に与える影響は大きく分けて2つあります。

 1つ目は報酬を先延ばしにするのが苦手になること。2つ目は子供の方がスマホに依存しやすく、いままで述べてきたような集中力や睡眠への悪影響がより顕著に現れることです。

Ⅰ. 報酬の先延ばし

 健康的なスタイルを保つために目の前にあるケーキを食べるのを我慢する、いい大学に入るために今日はYoutubeを見るのをやめて勉強するといったように、将来より大きなご褒美をもらうために、すぐにもらえるご褒美を我慢することは人生の成功に密接に関連したの能力であることが言われています。

 有名な実験としては、マシュマロすぐに1個貰うより、2個貰うために15分待てる4歳時は、数十年後に学歴が高く良い仕事についている可能性が高いといったものがあります。

 つまり自制心は人生の早い段階で現れ、将来にも関わってくるということです。そしてよくスマホを使う人の方が衝動的になりやすく、報酬を先延ばしにするのが下手だと言うことが明らかになっています。

 その兆候はすでに子供たちに現れているようで、本著では一例としてクラシック系の楽器を習う生徒の方が以前より著しく減ったことが取り上げられています。

 今の子供は即座に手に入るご褒美に慣れているから、すぐに上達しない物事に粘り強く取り組む姿勢がキープできない傾向があるとのことです。

Ⅱ. 依存しやすさ

 報酬の先延ばしとも関連しますが、子供の方がスマホに依存しやすいのは、スマホが人の報酬系を刺激する凄まじいパワーを秘めていて、この衝動を抑制する脳の機能は子供や若者の方が未発達であることに起因しています。

 アルコールが未成年に禁止されているのは、大人よりも依存症になりやすいことも一役買っているとのことです。

 スマホは規制こそされていませんが、スマホを使う頻度は若者ほど高く、中学生が最も高いことが明らかになっています。

3. どうすれば悪影響を抑えられるか?

 ここまでスマホの悪影響についてたくさん見てきました。大切なのは具体的にどのようにスマホとの距離感をとるのかということです。

 本著では最後に簡易的なアクションがまとめられていました。

 今回は本著で紹介されているアクションプランの中から、効果の大きそうなものを取り上げつつ、個人的な感想を交えて紹介させていただきたいと思います。

3.1 プッシュ通知をオフにする

 1つ目は通知周りをシャットアウトすることです。

 スマホの通知はロック画面表示、バナー表示、サウンド、バッチなどがあると思います。LINEで仕事の連絡が来るなどの例外を除いて、これらの通知は全て切ってしまうのが理想です。

 特にサウンドは強制的に意識を持っていかれるので、大切なポイントかと思います。

 自分は比較的重要度が高いLINEのバッチ通知だけ残し、それ以外の通知は全てオフにしています。

 メールなどは通知がないと不便かなと思っていましたが、メールのチェックも通知起因ではなく、1日のうちにチェックする時間帯を決めておけば、通知も不要でかつ重要度の低いメールのためにアプリを起動する回数が減るのでおすすめです。

3.2 作業場と寝室にスマホを置かない

 2つ目はスマホを物理的に遠ざけることです。

 本著でも取り上げられていた有名な実験で、スマホによる集中力の阻害は、スマホが視界に入っている時だけでなくポケットに入ってるだけでも起こるということが明らかになっています。

 こうなるともう物理的に距離を取るしかスマホから逃れる術はないということになります。

 特に1つ目で通知をオフにしたとしても、スマホが手元にあるとふとした時に「メールきてないかな」とアプリを開きそうになる誘惑に駆られることがあると思います。

 本著で再三示されていたように、スマホの影響は脳の設計上然るべき結果として起きていることが多いので、このように意志の力だけでは対策しにくい部分があるのも事実です。

 なのでスマホを遠ざけてそもそも触る機会がないようにするのがベターかなと思います。

 自分はテレワークが多いですが仕事中も寝る時もスマホは洗面所に置くようにしています。前は通知を切るのみでしたが、作業場にスマホがあると仕事の合間の休憩時にスマホをいじってしまい、全く脳の休憩にならないということが多々ありました。

 スマホを物理的に遠ざけるようにしてからは、休憩時間に筋トレをしたり掃除をしたりと良い時間の使い方ができているような気がするのでおすすめです。

 また睡眠の章で記載しましたが、寝室にスマホを置かない(寝る前にスマホの画面を見ない)ということは個人的に最も効果のある行動でした。

 これはとてもおすすめなのですが、デジタルのドップリの現代人がスマホやPCを使わずに、寝る前に1〜2時間に何をするのかを決めるのはなかなか骨が折れることだと思います。

 現状自分のベストアンサーは読書です。ブルーライトを浴びないように紙の本か、kindleなどの専用のタブレットを用いれば、睡眠への悪影響を抑制しながら過ごすことができます。(※個人の感想ですが寝る前は実用書系よりも小説系の方が、眠りにつきやすくなるような気がしています。)


 スマホが脳に悪影響だなとはぼんやりと感じていましたが、いざその調査結果を見せつけられると何か改善しなくてはと思わされるくらいの事実が明らかになってきているなと危機感を覚えました。

 本著の特徴として、現代で表れている集中力の欠如や睡眠不足といった問題点を、スマホを介しながら、人間の脳の進化のプロセスに沿って示してくれている点があります。そこが分かりやすくて読みやすいのと同時に、脳の設計上そうなっているのだから意志の力だけで抗うのは難しいということを痛感しました。

 皆さんも自分のスクリーンタイムを確認してみて、これは長すぎる!と思ったら一度スマホの通知をオフにして、身の回りからスマホを遠ざけてみてください。

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