おすすめ小説【5選】

おすすめ本

 2021年も終わりに近づいてきたということで、今回は自分が今年読んでよかったと思った小説をご紹介します。

 普段は実用書を読むことが多いのですが、仕事が忙しくて穏やかな気持ちになりたい時などは、小説を読んだりしています。

 今年読んだ15冊の小説の中から、特によかったものを5つ選んだので、気になっていただけましたら是非お手に取って読んでいただけたらと思います。

1. すばらしい新世界

 まず初めは、イギリスのオルダス・ハクスリーさんが1932年に出版された「すばらしい新世界」(原題:Brave New World)です。

 ジャンルはSF・ディストピア小説で、2050年以降の近未来のユートピアが描かれています。

 世界観としては、T型フォードの生みの親である「ヘンリー・フォード」を神と崇める、大量消費・大量生産社会で、徹底的に安全と幸福を突き詰めたものとなっており、10人の世界当事者と呼ばれる人たちが設計した人生プランを、国民全員がなぞることで、全員が幸せになれる世界を実現しています。

 例えば、歴史や宗教、その他文化的な娯楽は一切排除されており、国民全員が、副作用のない麻薬である「ソーマ」という共通の娯楽に勤しむように設計されています。

 序盤はバーナード・マルクスとその恋人であるレニーナ・クラウンを中心に話が進みますが、ストーリの転機として、この完成された世界に、我々の世界に似た「インディアン居留地」からジョンがやってくる出来事があります。

 ジョンがこの一見楽園にも見える世界の中で、その国民の生き方に違和感を感じ、もがいていくところが物語後半のメインとなっています。

 この本を読むと、幸福についてすごく考えさせられるというのが率直な感想でした。

 勿論この世界のようにあらゆる選択肢が排除され、みんなが同じ人生を辿ることによる幸福もどうなのかなと思います。

 一方で現代のように、日に日に人生の選択肢が増えていくものの、逆に何をすればいいのかわからなくなったり、何か選択したとしても、後から他の選択肢がちらついて、やっぱりあれをやればよかったと後悔することも少なからず増えていくのかなと思いました。

 余暇に関しても同じで、週休3日制の導入が謳われたりしていますが、増えた休日で人々は何をするのだろうかなど、幸福に関する問いが数多く散りばめられている一冊となっています。

2. アルジャーノンに花束を

 2作品目は、アメリカのダニエル・キイスさんが1959年に書かれた「アルジャーノンに花束を」(原題:Flowers for Algernon)です。

 知的障害を持った青年であるチャーリー・ゴードンが、知能を向上させる手術の人間被験者第一号となり、IQが68から185まで上昇するというのが大まかな内容です。(ネズミの被験者がタイトルにあるアルジャーノンです。)

 IQが急上昇することで、チャーリーの性格も大きく変化するのですが、それに対して自分自身の人生を見つめ直したり、周囲の人の振る舞いが変わっていくことが本作の見どころです。

 特にチャーリーが通う知的障害クラスの先生であるアリス・キニアンや、チャーリーの職場のアーサー・ドナーをはじめその他の同僚との描写の移り変わりは、色々と考えさせられる部分かと思います。

 この本の結末の捉え方は色々あるかと思いますが、個人的には悲しい側面も大きかったなと思いました。

 ただ幾多の苦心を乗り越えて、前向きに生きていこうとするチャーリーの姿に、心暖まる部分もあり、感動の意味でも、哀傷の意味でも泣ける一冊だと思います。

 

3. ずっとお城で暮らしている

 3作品目は、アメリカのシャーリー・ジャクスンさんが1962年に書かれた「ずっとお城で暮らしている」(原題:We Have Always Lived in the Castle)です。

 この本はミステリーのようでもあり、ホラーのようでもある不思議な一冊となっています。

 村外れのお屋敷に住むブラックウッド家の3人(メアリ・キャサリン/コンスタンス/ジュリアン)を中心に話が進んでいきます。

 ブラックウッド家は資産家なのですが、6年前に上記の3人を除き一家のほとんどが毒殺される事件が起こっていました。

 その犯人が未だ見つからない中で、メアリを中心に村人との関係性や、従兄弟のチャールズをめぐってストーリーが展開されていきます。

 初めて読むタイプの本だなというのが率直な感想でした。

 謎が多いまま終わるストーリーなので、解釈は人それぞれになるところも面白い点だと思います。それでいて不完全燃焼感がないのがすごい。

 徹底的なまでに狂気と悪意が描かれていて、特に後半はどんよりとした気持ちにさせられる面もありますが、読み終えるとどこか爽やかな(?)うっとりとするような気持ちになるのも驚きでした。

 新しいジャンルの本を読んで見たい方にはおすすめの一冊です。

4. 朗読者

 4作品目は、ドイツのベルンハルト・シュリンクさんが1995年に書かれた「朗読者」(原題:Der Vorleser)です。

 主人公である15歳のミヒャエル・ベルクが、学校からの帰り道に急な体調不良に見舞われ、その際にハンナ・シュミッツが看病をしたことから、親しくなった二人の関係が、生涯に渡って描かれています。

 当初はハンナに頼まれて、ミヒャエルが本の朗読を行っていましたがある日突然ハンナは行方をくらましてしまいます。

 ミヒャエルは、数年後に思いがけずハンナと再開しましたが、その場所はナチスの戦争犯罪に関する裁判でした。

 物語の前半と後半で、ミヒャエルの雰囲気がガラッと変わるところが、読んでいてどんどん引き込まれました。

 結末がハッピーエンドとは言い難いような感じなので、スッキリとした読了感が好きな人は苦手かもしれませんが、それぞれの登場人物の人生に思いを巡らせて、自分ならどうするだろうかと考える楽しさがあるのかなと思います。

 ちなみにこの作品は2008年に「愛を読む人」というタイトルで映画化されています。

5. 博士の愛した数式

 最後の作品は、小川洋子さんが2003年に書かれた「博士の愛した数式」です。

 家政婦で物語の語り手の「私」が、80分しか記憶が持たない元数学者である「博士」の家で過ごす日々を書き連ねた内容となっています。

 途中から「私」の息子も「博士」の家に通うようになり、特にこの「博士」と「息子」のやりとりが見どころかなと思います。

 物語が進むにつれて、博士の記憶時間は短くなり、最終的には施設に入れられることになります。

 

 有名な作品なので名前は知っていましたが、読む前はタイトルからして、何か固有の数式に対して愛着を持ったストーリー展開なのかなと思っていました。

 実際には数学を道具とした、博士と家政婦と息子の家族愛の様なものが際立っていた様に思います。

 博士が何故あんなにも子供に対して無償の愛を振りまいていたのかは分かりませんでしたが、子供は大人よりもずっと難しい問題に直面しているといった、単純なリスペクトに留まらない、奉仕の姿勢があるのがとても良いなと感じました。

 終盤の義姉が言った「私のことは一生忘れないけれど、あなたのことを覚える日は一生来ない」というセリフが悲しくもあり、一歩でそんなことを忘れさせるくらい、一貫して仲睦まじい姿が描かれた、暖かいストーリという印象が勝った様に思います。

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