愛するということ

おすすめ本

 前回、「なぜ私たちは孤独なのか」という本をご紹介し、現代における"孤独"の原因と、その対象方法に関して記述しました。今回はその派生として、1956年にエーリッヒ・フロムさんによって書かれた、「愛するということ」を取り上げたいと思います。

 1956年に出版ということで、初めは「50年以上も前の考え方が現代にそこまで当てはまるのだろうか」と懐疑的でしたが、読んでみると最近書かれたのでは?と錯覚するくらい身に沁みる内容でした。

 また、タイトルがかなり厳かだなという印象も受けていましたが、実際は「恋愛・パートナー」といったことに閉じた話ではなく、「他者との関わり方」という汎用的な考え方を示している本でした。なので、人間関係がうまくいかないと思っている人たち全般におすすめできるかと思います。

著者について

孤独の処方箋

 本著では愛の話を始める前に、以下のような人間に関する議論が展開されています。

"人間のもっとも強い欲求は、孤立を克服し、孤独の牢獄から抜け出したいという欲求である。この目的の達成に全面的に失敗したら、精神に異常をきたすにちがいない。なぜなら、完全な孤立という恐怖心を克服するには、孤立感が消えてしまうくらい徹底的に外界から引きこもるしかない。そうすれば、外界も消えてしまうからだ。"

本著 第二章 「愛の理論」より

 本著では、この孤独に対する解決策として「愛する技術」が論じられていくのですが、その前に"愛"以外に孤独の処方箋となりうるものはないのでしょうか?

 フロムは、現代でよくある孤独の処方箋候補として以下の3つを取り上げていますが、どれも解決策にはなり得ないだろうとしています。

Ⅰ. 酒/麻薬
孤独は解消されず、依存症になり苦しみが増す。

Ⅱ. 性行為
部分的な解答になるが、(後述する類の)愛がなければ却って孤立感が深まる。

Ⅲ. 集団への所属
能動性を失い、没個性的な人間になる恐れがある。

 これらの対比として、「愛するということ」が最適解だと主張されています。しかしフロムは、現代人は「愛するということ」に対する誤解を持っているために、うまく行えていないと警鐘を鳴らしています。

愛するという問題に対する誤解

Ⅰ. 愛する能力の問題ではなく愛される能力の問題
 ここで著者は、人々が愛する能力ではなく、愛される能力を磨くことにエネルギーを割いていることを指摘しています。男女で違いはあるものの、一般的に、社会的に成功したり、好感を持たれるような容姿・態度を身につけることばかりが注目されがちですが、重要なのは「能動的に愛する能力」であると言います。

Ⅱ. 愛する能力の問題ではなく愛する対象の問題
 現代社会により顕著ですが、お見合い結婚がほぼ消滅し、自由恋愛が基本になったことによる誤解と言われています。「いい相手がいない」なんてとてもよく聞く言葉ですが、フロム曰く、自分に相応しいと思える相手かどうかを気にしているので、その実感が持てなければ他の相手を求め、愛する能力が身についていかないと指摘しています。

Ⅲ. 愛は持続的な状態ではなく落ちるもの
 フロムの言葉を引用すると、「(恋が始まるときの)一体感を覚える瞬間は奇跡的な瞬間だろう。…しかし、親しくなるにつれ、反感、失望、倦怠が最初の興奮のなごりを消し去ってしまう。しかし、ふたりともそんなこととは夢にも思わず、たがいに夢中になった状態、頭に血がのぼった状態を、愛の強さの証拠だと思いこむ。」ことで、愛が長続きしなくなると言います。


まとめるとこれらに共通するのは
『愛することは簡単だけれど、相手や環境的な問題で、愛が上手くいかないという思い込み』
が蔓延している、ということでしょうか。

このような状態を受けてフロムは我々に、「愛する能力」を鍛えましょうと提案しているのです。

愛する能力の源泉

Ⅰ. 配慮
 母親が子供のことを気にかけたり、ペットの容体に気を配ったりと、ある者の生命と成長を積極的に気にかけること。つまり何かのために働き、何かを育てるということ。

Ⅱ. 責任
 外側から押し付けられる"義務"や"務め"というよりは、自発的に、他の人の求めに応答すること。そしてそのための準備ができている状態を責任があると言う。述したように、愛されることだけを重視している状態は無責任と言える。

Ⅲ. 尊重
 他人がその人らしく成長・発展していけるように気遣うこと。そのためには自分が独り立ちして、相手を利用したり支配したりすることがない状態でなければならない。

Ⅳ.
 相手の立場に立ってその人を見つめること。例えば相手が内心に怒りを抱えているときに、その人がないに怒りを感じているか、さらには何に苦しんでいるかと言うことを理解すること。


 個人的には、現代人の愛に対する誤解がいちばんインパクトがありました。後半で出てくる「配慮・責任・尊重・知」が対人関係で大切というのは、(できているかどうかは別として)何となく分かる部分かと思いますが、"愛される能力"といった受け身的なマインドをベースに考えてしまうことは、まさに思い当たってしまったので、学びになりました。

 その誤解の背景にある自由恋愛は、ポジティブな変化だけに着目すると、「自分で相手を選ぶことができるようになって良かった」が際立ってしまうような気がするのですが、今回議論されていたような受け身の姿勢が現れがちになるという面もあるのは、ある意味で面白く、注意していきたい観点だなとと思います。

 本著ではより具体的に、愛する技術の「理論と実践」が記載されているので、ぜひご一読ください!

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