Joy at Work –片付けでときめく働き方を手に入れる

おすすめ本

はじめに

 みなさんは、近藤麻理恵さんの「人生がときめく片付けの魔法」(2010年)をお読みになられたでしょうか。本著はシリーズ累計700万部突破で、テレビドラマ化もされているベストセラーとなりました。この本では、身の回りを一度片付けたら二度と散らからない方法が紹介されており、片付けによって人生が好転した読者の声も多数上がっています。

 今回ご紹介するのは、そんな近藤麻理恵さんと、米国ライス大学の教授で組織心理学者でもあるスコット・ソネンシェインさんが書かれた「Joy at Work −片付けでときめく働き方を手に入れる」です。

 この本では「人生がときめく片付けの魔法」の考え方を仕事場に適用したもので、特徴としては、物理的なモノだけでなく、デジタル文書や会議といった非物理的なモノの片付けに関して解説されている点が挙げられます。昨今"ミニマリスト"という言葉を耳にすることも多いと思いますが、現実世界の片付けは様々なメディアで重要視されています。一方で、現代ではスマホやPCとは切っても切れない世界なので、自ずとデジタル領域における片付けも重要になっているのではないでしょうか。デジタルでは大容量が当たり前で、断捨離など意識しなくても良いように思えますが、本著ではその意義について取り上げられています。

整理整頓の科学的なメリット

 まず初めに取り上げたいのは、「片付けって本当にいい事なの?」についてです。確かに整理整頓されている環境は何となく気分がいいものですが、主観的な評価以外にも何か利点はあるのでしょうか。本著では以下の科学的根拠が紹介されています。

① 周りにあまりに多くのモノがあると、ストレスホルモンとよばれるコルチゾールが増加

 コルチゾールが慢性的に多いと、うつ病や不眠症などの精神疾患、生活習慣病などのストレス関連疾患につながりやすくなると言われています。

散らかっている環境にいるほど、脳にも負担がかかる

 モノが多いと、モノの存在を認識することに脳を使ってしまい、仕事上のタスクや他の人とのコミュニケーションなど、目の前の「やるべきこと」に集中することが難しくなります。

 さらに、あふれたモノや情報、スケジュールに圧倒され、仕事において自分に主導権・選択権があるという「コントロール感」が失われます。この「コントロール感」がないと、自分の夢や目標のために仕事をしていることを忘れてしまい、人は不要なモノを手に入れる傾向があるとのこと。これはちょっと嫌な悪循環ですね。購買欲が高いと部屋が散らかるのだと思っていましたが、部屋が散らかっていると購買欲が増すので、より部屋が散らかりやすくなるようです。

 また心理学的にも、仕事空間が片付いている人ほど「勤勉」「知的」「友好的」といったポジティブな評価を受けやすい傾向があり、実際に信頼を得やすく、昇進しやすいということが明らかになっています。周りからの評価が上がると、「ピグマリオン効果」と呼ばれる好循環が発生しやすいこともメリットとしてあげられます。

残すべきモノの基準

 以上までで、モノが多いことの悪影響と片付けのメリットを列挙しました。行動プランとしては、まずものを減らすことになります。では仕事場のモノを減らすには、具体的にどのような基準で考えるべきなのでしょうか。以下で3つのポイントをご紹介します。

1. それ自体にときめきを感じるモノ

お気に入りのペン、デザインが大好きなメモ帳、デスクに飾っている家族の写真など、持っているだけで気分がハッピーになる、あなたのときめきに直結するモノ。

 私の場合は在宅勤務をしているので仕事場=自宅なのですが、棚に敷いている旅行先で買った花柄の手ぬぐいや観葉植物などがこれに該当します。極論を言ってしまえば無くても困りませんが、目に入ると楽しかった旅行の思い出がふと浮かんだりして、ポジティブな気持ちに慣れるので残してあります。

2. 機能の面で役に立つモノ

ホチキスの芯や業務用ガムテープなど、特段使っていてときめくわけではなくても、日々の業務であなたをサポートし、「これがあるおかげで安心して仕事ができるんだな」と思えるモノ。

 これらはもちろん必要ですが、個人的には細々したものが目に入るのが苦手で、収納スペースの奥にしまってあります。なるべく身の回りをペーパーレスにしたりして、機能面で役に立つモノが少なく済むようにするのは、在宅勤務の人は特に大切なのかなと思います。

3. あなたのときめく未来につながっているモノ

たとえば領収書自体はときめかなくても、きちんと清算することで経費として返ってくるという明確なメリットがあります。また、あまり気が進まないプロジェクトに関連する書類なども、その仕事をやりとげることでキャリアアップにつながったり、信頼感が得られたりするという未来が描けるならば、「未来のときめき」につながっていると考えることができるます。

 長期的な目線でモノを考えると、「いつか使うかもしれないから取っておこう」という考えが浮かんでしまうので、自分の理想像とうまく照らし合わせる必要があるなと感じています。(私は断捨離好きなので迷ったら捨ててしまいますが、、)

 以上の3つの判断基準で残すモノを決めると良いと提案されていました。「ときめく」の部分は難しいと思いますが、著者もざっくりと「仕事をする上でポジティブな役割を果たしてくれるかどうか」と言い換えているので、参考にしてみてください。次節では、この考えを4つの非現実領域にも適用していきます。

1. デジタル文書を片付ける

 端的に言ってしまうと「何でもかんでも保存しないように気をつけましょう」ということになります。デジタル文書は物理的な場所の制約がないので、ファイル数も簡単に膨れていきますし、それを整理しようと思って大量のフォルダを作成している状況はよくあると思います。デジタル文書は検索機能が使えるので、紙の書類の管理よりは探すのが簡単という意見もあるかもしれません。それでも本著では、データ量が少ない方が(当たり前ですが)検索にかかる時間が少なくて済むと述べられています。また個人的にも、検索したい文書がぼんやりと分かってはいるものの、文字列としてどのように書いてあったかが思い出せず、抽象的な気ワードでしか検索できなかったために、検索結果が膨大になると言ったことが何度もありました。チームで共有している文書などは、簡単に削除したり、フォルダの切り方を変えるのが難しいこともあるかと思いますが、まずは自分のローカルフォルダだけでも整理してみるといいかもしれません。

 また書類のスキャンに関しても注意が促されています。スキャンは便利で、紙の書類を断捨離しようと思った時に、とりあえずスキャンやスマホで撮影しておけば、必要になった時に重宝するでしょう。これは私も前にやっていて、とりあえずスマホで撮影してGoogleフォトにフォルダ分けしていたのですが、撮影にかかる時間や撮った写真を整理する時間がかなりかかってしまいました。何より問題なのは、撮影したモノのうち見返したものがごく一部であったことです。本著でも、何でもかんでもスキャンすれば良いのではなく、捨てれるものをしっかりと吟味することが提案されています。デジタルは場所を取らないので量に関しては甘めの判断をしがちかと思いますが、整理の手間をよく考えて捨てれるものはしっかり捨てようということになります。

2. メールを片付ける

メールと仕事を混同してはいけません。メールは仕事をするためのツールの一つですが、仕事そのものではありません。

 2018年にアメリカで行われた、2000人の企業労働者を対象にしたレポートでは、一般的なオフィスワーカーは1日の就業時間の半分ほどをメール関連の作業に充てており、半数以上がメールが仕事の妨げになると考えているそうです。なかなかショッキングな数字ですね。また、受信BOXに保存されている未開封のメールは平均およそ200件にものぼるとのこと。メールに割く時間が長いほど生産性は低下し、ストレス度が上昇することも明らかになっています。

 このように列挙するとデメリットがかなり大きいです。本著ではメールの片付けに関して以下の2点がポイントとして挙げられています。

 削除済みフォルダがあることを考えれば、①は比較的取り組みやすいのかなと思います。私も実際にやっていますが、受信BOXがスッキリしていると、それ自体がその日のTo-doリストのようになり、現状把握が自然とできるため非常にお勧めです。②は実際問題そうも言っていられないケースも多いかと思います。1日2回のみのメールチェックはある意味、最終形態のようなものだと思うので、まずは「この1時間はメールを見ない!」のように決めて、徐々にチェックの頻度を落としていくのが良いのではないかと思います。

3. スマホアプリを片付ける

 2015年にイギリスで行われた研究によると、標準的な人は1日に85回スマホを使い、その使用時間は5時間以上にものぼると言われています。2021年にさしかかろうとしている現在では、さらに長時間スマホが使用されているような気さえしてしまいます。このように物理的な時間の面でも、かなりの影響力があるスマホですが、驚くべきことに、スマホをデスクの上に置いておくだけで仕事の能率が低下することが実験で明らかになっています。

 本著ではスマホを手元に置く頻度を下げるために、アプリケーションの断捨離を行うことを提案しています。現実のモノの断捨離と異なる点としては、アプリであれば再ダウンロードが容易なので、やっぱり必要だったなと思ったときにリカバリーが効く点です。なのでもう使っていないアプリケーションはもちろん、滅多に使わないアプリもいっそアンインストールしてしまっても良いのかもしれません。

 またスマホのホーム画面を整理することもお勧めされています。私はiPhoneユーザーですがiOS14にアップデートされて「Appライブラリ」が導入されてからホーム画面の整理を行いました。SNSでバズっていた方のホーム画面を参考に一画面によく使うものは全て納めると決めて整理したところ、とてもすっきりして気に入っています。

 特に複数のアプリが入ったフォルダを作ると、どこに何が入っているかが一目でわからなくなってしまうことがあり(私のカテゴリ分けが下手なだけかもしれませんが)、それを避けたのが大きなメリットになっていると感じています。もちろんこれだけでは生活できないので、必要だが使用頻度が低いものは「Appライブラリ」の方にいます。ショートカットアイコンを作成してモノクロにしているのは完全に自己満足なのですが、前までのアプリで溢れかえったカラフルなホーム画面を見る、あまりにごちゃついていてうんざりしている節があったので、「自分の気分があがるホーム画面」というのが大切なのかもしれません。

4. 会議を片付ける

 最後は会議の片付けです。ノースキャロライナ大学の教授がシニアリーダーを対象に調査したところ、会議についてのコメントのほとんどが「非生産的」「非効率的」「重要なことをするのを妨げる」「グループの関係を改善させない」など散々な言いようでした。これはやや定性的な内容ですが、一般的なオフィスワーカーが非生産的な会議で無駄にしている時間は、1週間あたり2時間40分に及ぶことが研究により明らかになっています。これは皆さんも思い当たる節があるかと思います。一方で会議は自発的に企画や参加しているものが少ないと思うので、片付けといってもなかなか難易度が高いと思います。本著では以下の3つのポイントが示されています。

 ①と③は難しいですね、、②であれば個人的な働きかけで会議をより円滑に勧められる要素になるので、やってみる価値はあると思います。出社していると厳しいですが、テレワークでのオンライン会議では、無駄な会議の時間をその他の作業に当てることができるので、自分が出席する意味はないけれど強いられている会議ではうまく活用することが、結果的にWin-Winになるかもしれません。③のなかで所要時間が短くて済むと書かれているように、目的が不明確で準備ができていないためにダラダラと続く会議が最もよろしくないと思うので、②を意識していきたいところです。

おわりに

 私は身の回りはもちろんのこと、部室やバイト先の事務所なども掃除するくらいには、断捨離好きなタイプですが、仕事における片付け、とりわけデジタルにおける片付けというのはあまり取り組めておらず新鮮でした。特にメールや書類の部分で、今まではアーカイブ&検索の動きを使っていましたが、そもそも本当にアーカイブが必要なのかということは確かに考えなくてはいけないなと強く感じました。検索も呼び方が複数あるものに対しては、素早く引っ張って来れなかったりするので、物理的に量を減らすことは有用だと感じています。実際、本著で紹介されていた受信BOXを保存場所にしないを実行してみると、タスクが明確に整理され、業務上とても快適です。
 本著では今回取り上げた内容以外にも「具体的なオフィス小物(文具やガジェット)の片付け方」や「チーム・人脈・時間・決断の片付け方」などが紹介されています。興味をお持ちいただけた方は、ぜひご一読ください。

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