岩田さん

おすすめ本

2021年末時点で累計1億台以上を売り上げているNintendo Switchを筆頭に、家庭用ゲーム機の製造・販売企業としてトップを走る任天堂。

今となっては少し懐かしいですが、ニンテンドーDSは1.5億台(ソフトは9.5億本)、Wiiは1億台(ソフトは9億本)という爆発的な売り上げを記録しています。

そんな任天堂の社長を2002年から2015年にわたって務めた岩田聡さんは、2015年7月に胆管腫瘍のため亡くなられました。

ご自身で書籍を出版されることのなかった岩田さんですが、生前のインタビューや対談で語られていた内容をもとに、岩田さんはこんな人だった、こんなことを考えていたというのをまとめているのが、今回ご紹介したい「岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。」です。

本書は天才プログラマーとして「大乱闘スマッシュブラザーズ」や「ゼルダの伝説」、「星のカービィ」、「MOTHER」といった多くの名作ゲームを生み出し、ニンテンドーDSやWiiなど革新的なゲーム機をプロデュースした、岩田聡さんの経営理念・価値観・哲学などが凝縮された一冊です。

この本、とても面白く何より新鮮でした。インタビューや対談ベースなので、小話がたくさん詰まっていて楽に読めるところがよかったです。

あとは世代的に馴染み深い、ニンテンドーDSやWii、そしてスマブラやゼルダの伝説、星のカービィといった作品の話が出てくると、流石に盛り上がりました、、

今回はその中から岩田さんの「コミュニケーション」と「リーダーシップ」についていくつかご紹介したいと思います。

岩田さんってどんな人?

そもそも岩田さんがどんな人なのか?という点をさっと見ていきたいと思います。

岩田聡さんは1959年に北海道札幌市で生まれ、高校まで同地で育ちました。

高校時代に当時最新だったヒューレット・パッカード社のプログラム電卓の存在を知り、アルバイト代と父親の援助により購入(調べたところ、値段は450ドルで当時の為替が約295円/ドルだったので13万円ほどの代物でした)。

その面白さにのめり込み独学でプログラミングを学び、自作ゲームをヒューレット・パッカード社に送付すると、その品質の高さに驚いた同社から大量の資料が送られてくる、というとんでもエピソードを抱えています。

その後東京工業大学に進学し、そこでも最新のコンピュータをローンを組んで購入。プログラミングにいそしみ卒業後はゲーム開発を行う「株式会社ハル研究所」に入社します。

一時は経営危機に陥っていたハル研究所ですが、入社10年目の岩田さんが社長に就任し、15億あった負債を完済し、経営再建を成し遂げるといったこれまたとんでもエピソードとなっています。

その経営手腕を当時の任天堂社長であった山内溥さんに買われ、2000年「任天堂」に取締役経営企画室長として入社しています。

ごりごりのプログラマーでもありながら、当初から優れた経営者でもあったというハイスペックっぷりにはなんとも驚きです、、

岩田さんのコミュニケーション

そんな優れた経営手腕を発揮してきた岩田さんですが、コミュニケーションについて以下のようなことを大切にしてきたといいます。

  • 社員全員と1:1で面談する
  • コミュニケーション不和の原因は自分にある

それぞれエピソードと共に見ていきたいと思います。

半年ごとに社員全員と面談

自分は相手の立場に立ってものを考えているつもりでいたのに、直接ひとりひとりと話してみると、こんなにいろいろな発見があるのか、と思いました。

第1章 岩田さんが社長になるまで 社長就任と15億の借金。 より引用

これは岩田さんが経営危機に陥っていたハル研究所の社長に就任した際に、経営判断のモノサシを作ろうと思い、社員と面談した際に感じたことだといいます。

ここでの経験をもとに、岩田さんはハル研究所の社長時代、半年に一回社員全員と面談をしていたそうです。

多い時には90人との面談を行うことになり、それを7年近く継続していたとのことです。

これだけの時間を割いてきた理由として、岩田さんは下記のように語っています。

会社がいろいろなことを決めたときに、ふつうの社員の人たちはほとんどのケースで、なぜそう決まったのかがわからないんです。単純に、情報がないですから。「社長はあんなことを言っているけど、どうして?」というようなことが、いっぱいあるんですね。

第1章 岩田さんが社長になるまで。 半年に一回、社員全員と面談。 より引用

このようなギャップは、会社に対する不信感につながるとして、逆に皆が同じ価値観を共有できている状態こそが社の幸せにつながると岩田さんは考えられていました。

会社の経営判断が、なんでそうなったのか分からないのは、サラリーマンあるあるすぎて疑問すら持たないことが多いように思えてしまいますが、同じ会社の人間として何かしらのビジョンを共有するために1:1で対話するというのはそれだけ価値があることなんだなと再確認した思いです。

かといって皆が社長に面談をお願いできるわけではないので、上司との面談などの中で経営判断について雑談してみるのもいいのかなと思いました。

コミュニケーションがうまくいかない時

コミュニケーションがうまくいかないときに、絶対に人のせいにしない。「この人が自分のメッセージを理解したり共感したりしないのは、自分がベストな伝え方をしていないからなんだ」と思うようにすると決めたんです。

第3章 岩田さんの個性。 プログラムの経験が会社の経営に生きている。 より引用

これは本書の中でも、特に新鮮で独特だなと感じた部分で、岩田さんのコミュニケーション哲学のようなものです。

この背景には、プログラミングにおいての真理である「機械はロジックに従うだけで間違いを起こさない。間違いの原因は自分にある。」という考え方があります。

相手と話が噛み合わなかったら、自分の伝え方に問題があるとして、伝え方を工夫し理解や共感が得られるような道を探し出すという姿勢を持っていたとのことです。

自分の場合は、相手が間違っているとは思わないまでも、考え方が違うなら共感できなくても仕方がないかなどと思ってしまう方なので、この考え方はとても新鮮でした。

岩田さんのリーダーシップ

続いて岩田さんのリーダシップについて見ていきたいと思います。

優れた経営者として会社をリードしてきた岩田さんは、どんなことを大切にしていたのか

  • 仕事における優先順位
  • 方向転換の時に大切なこと
  • 目指すビジョンの共有

の3つに注目して取り上げます。

仕事における優先順位

プログラムの世界では、「全体のなかの1%の部分が、全体の処理時間の七割から八割を消費している。」などと言われる。ところが、人はとにかく手を動かしていたほうが安心するので、ボトルネックの部分を見つける前に、目の前のことに取り組んで汗をかいてしまいがちです。そうではなくて、いちばん問題になっていることはなにかとか、自分しかできないことはなにかということが、ちゃんとわかってから行動していくべきです。

第2章 岩田さんのリーダーシップ。 ボトルネックがどこなのかを見つける。 より引用

ボトルネックに関しては、「売上げの8割は2割の社員に依存する」と言う有名なパレートの法則(80:20の法則)を例に、至る所で取り上げられている気がしますが、これに基づいてボトルネックを探そうとするのは結構難しいと言っている部分が新鮮です。

ただ確かに納得の内容で、何かしら手を動かしていると”やった感”が出るので、成果に依らずに満足してしまいがちなのは個人的にも思い当たる節があります。

岩田さんはボトルネックを探すときのポイントして、目の前の仕事以外の物事や、個人作業ならチーム作業の、チーム作業なら個人作業のボトルネックを参考にすると良いと述べられています。

本書では具体的な例までは記載されていませんでしたが、ビジネスシーンで簡単な例を考えてみると、チーム内で新しいドキュメント作成のルールが共有されていないことで手戻りが発生していた場合に、部署間でもそのルールの共有ができていなくて手戻りが発生しているのではないかと考える、と言ったことになるのでしょうか。

方向転換の時に大切なこと

世の中のありとあらゆる改革は現状否定から入ってしまいがちですが、そうするとすごくアンハッピーになる人もたくさんいると思うんです。だって現状をつくりあげるために、たくさんの人が善意と誠実な熱意でやってきたわけでしょう? 不誠実なものについて現状否定をするのはいいと思うんですけど、誠実にやってきたアウトプットに対して現状否定をすることは、やってはいけないと思うんです。

第2章 岩田さんのリーダーシップ。 成功を体験した集団が変わることの難しさ。 より引用

ゲームなどのソフトウェアは、物理的な機械などと違ってトライアンドエラーが素早くできるため、特に進化が早いと言われています。

ハードウェアの金型を直す手間に比べて、マリオがジャンプする高さを調整するのは極めて短時間でできると言うことです。

こうなると今までやってきた方針が通用しなくなり、方向転換をする必要が出てくることも多いといいますが、その時に現状否定から入ってしまいがちであると注意喚起がされています。

岩田さんが強調しているのは、「私がもし同じ時代にいたら同じような方法をとったと思う」とまず現状を肯定することに重きを置いているところです。

コミュニケーションのところで触れたように、社員間で理解と共感を育むためには、このような現状否定をしないと言うことが重要であると説いています。

目指すビジョンの共有

どういうときに企画がうまくいくかというと、最初の計画では決まってなかったことを、「これ、ぼくがやっておきましょうか?」というような感じで誰かが処理してくれるとき。

第2章 岩田さんのリーダーシップ。 プロジェクトがうまくいくとき。 より引用

これはここまでのコミュニケーションやリーダーシップについての集大成のような部分だと思っているのですが、プロジェクトがうまくいくのは、理想的なリーダーが完璧な計画を立てて、その通りに実行できた時ではなくて、「これぼくがやっておきましょうか?」がたくさん出る時だと言います。

そういう現象が起きない時は、たとえ完成したとしても不協和音のようなものが残るとさえ述べています。

本書ではWiiの開発時にこの現象がとてもたくさん起こったと書かれています。

その背景には、開発の初期から「Wiiをこう言うゲーム機にしたい」と言うビジョンの共有を繰り返し行ってきたことがあると言います。

このことからも分かるように、岩田さんは根っからの技術者でありながら、人間関係が非常に巧みで、かつその人間関係の調和を保つことを重要視していたと言えそうです。

岩田さん本人の言葉でこそないですが、親交の深かった糸井重里さんの言葉で「半年でやります、と宣言した岩田さんは、自分ひとりで黙々とゲームを直していくんじゃなくて、スタッフ全員がゲームを直せるような仕組みをまずつくった。それがすごく新鮮な驚きでした。」と言うものがあります。

こういった周囲からの意見にも、岩田さんの人間関係の調和を重んじる人柄が現れているのかなと思います。

感想

この本を読むまでは岩田聡さんのことは、ゲームのエンディングでいつも名前が出てくる人程度にしか認知できていなかったのですが、今回岩田さんの人柄や考え方に触れて、非常にパワフルでシンプルに学ぶべき部分の多い偉人だなと感じました。

この本に書かれているコミュニケーション不和の原因が自分にあると言う考えや、現状否定から入らないと言う考えは、社長かどうかに限らず、生活上の人間関係全てに当てはまる汎用的なことだと思います。

さらっと書いてある割に結構難しいことで、今日からすぐに実践できる気は全然しないですが、今は亡き岩田さんと言う偉大な人物が大切にしていた考えを、自分の頭の片隅にちゃんと置いておきたいなと思いました。

本書には、その他多くの岩田さんの生の言葉が掲載されています。興味をお持ちの方は是非ご一読ください!

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