先生、どうか皆の前でほめないで下さい

おすすめ本

私は2022年現在で26歳。ゆとり世代ではあるものの、世間でよく言われるZ世代とは少しずれた年代となっています。そのZ世代に対する個人的な興味として、彼らがどんな考えを持っているのかについて、今まで下記のような本を見てきました。

そんな中、上記の本の内容を、より体系的にまとめていると感じたのが、金沢大学の教授である金間大介さんの書かれた『先生、どうか皆の前でほめないで下さい―いい子症候群の若者たち』です。

大量で正確なデータを綿密に分析したというよりは、著者が実際の若者との交流の中で体験したことや、学生へのアンケートが多く記載されていて、リアルを知るという意味でとても面白い一冊でした!

文章もコミカルで読みやすく、具体的なエピソードもりもりで、まるで著者と会話しているかのような展開だったので、若者の考えや行動についてライトに知りたい多くの人におすすめの一冊です!

いい子症候群の若者とは?

本書のテーマ
現代の若者が抱える複雑で微妙な心理を解読すること

この本では、現代の若者の印象として世間でよく言われる
「素直でいい子、真面目でいい子」「何を考えているかわからない、自分の意思がない」
といった特徴が具体的にどうなっているのかを深堀りしています。

現代の若者の特徴を「いい子の行動原則(いい子症候群)」として初めに列挙したいと思います。

  • 周りと仲良くできて協調性がある
  • 言われたことはやるけど、それ以上のことはやらない
  • 人の意見は良く聞くけど、自分の意見は言わない
  • 悪い報告はギリギリまでしない
  • 質問しない(匿名に限りする)
  • タテのつながりを怖がりヨコの空気を大事にする
  • 授業や会議、オンライン上では後方で気配を消し集団と化す
  • 自分を含むグループ全体に対する問いかけには反応しない
  • 自己肯定感が低く自信がない
  • 競争が嫌いで平等がいい
  • 特にやりたいことはない

どうでしょうか。私自身は微妙な年齢ですが、学生生活や会社の同期を思い出すと「質問しない(匿名に限りする)」や「授業や会議、オンライン上では後方で気配を消し集団と化す」なんかは、まさにその通りだなと思いながら読んでいました🫢

これらをベースに本書では、各章ごとに若者の特徴を具体的に解説しており、今回はその中から3つを取り上げたいと思います。

自分で決められない若者たち

まず初めは「自分で決めるのがとても苦手」という特徴から見ていきたいと思います。

この事について、本書で野球部の分かりやすい具体例が取り上げられていました。

ピッチャーに応募できない中学生

ある中学の強豪野球部で、エースピッチャーが怪我の治療に専念するために春夏の大会に登板しないこととなりました。
監督は代わりとなる新たなピッチャーを部内で募集すると部員に告げたとのことです。
ところが期限の1週間後になってみると、ピッチャーに応募したのは(リトルリーグで活躍したと周囲から注目されている部員)たった一人でした!

野球男子の憧れの対象であるはずのエースピッチャーのポジションに、たった一人しか応募しなかったのはなぜでしょうか?
この背景にこそ、「自分で決めるのがとても苦手」という若者の特徴が現れていると言います。

部員たちは他の部員が、
⿻ 自分から応募するってマジで恥ずかしい
⿻ どうせあいつがやるだろう。みんなもそう思っているはず。
⿻ 監督の真意はどうなんだろう。早く答えが知りたい。
のように考えているだろうと察して、それに従ったということです。

なぜ自分で決めることが怖いか?

野球部の事例から、現代の若者がなぜ自分で決めるのが苦手かの答えが見えてきます。
それは即ち、後で自分のせいにされたり、場の空気を乱すリスクを避けたいというものです。

なので特に他人が関係する決定事項では、特に決断が難しくなります。
ただ、そうは言っても現実世界では決断を迫られることが多々あります。
そんな時「自分で決めるのがとても苦手」な若者はどうするのでしょうか?

絶対に決めなくてはならないときは?

著者曰く、決断を迫られた若者がとる行動は下記の3つに分類できると言います。

  1. 誰かに決めてもらう
    社会心理学を専門とするシーナ・アイエンガーさんが書かれた『選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義』では、ヨーロッパ系の子どもより、アジア系の子どもの方が、親の選択に従う傾向が強いことが明らかにされています。
    若者のその他の特徴として「自身のなさ」も挙げられているため、より一層自分で決めることに億劫になっているのかもしれません。
  2. みんなで決める
    一人一人のアイデアを募集した上で、あくまで平等で客観的に決めていますという部分を強調するように努める「高度な同調プロセスを踏む」と解説されています。
    「最終的に〇〇さんの意見で決めました」なんてことにはならないように「みんなで決めました」というスタンスを演じ切ることが重要だと指摘されています。
  3. 例題に倣う
    例が示されれば自分で決断を下さずとも、例題を真似ればいいことになります。ただここで指摘されているのは、例題が示されないと何もできない若者の姿です。
    昨今の購買行動のきっかけとして、大衆メディアよりもSNSのインフルエンサーが重要視されていますが、これも自分では決められない購買行動や生き方の例をインフルエンサーの中に見出していると言えそうです。

これもかなり納得しながら読んでいました。特に「例題に倣う」の部分はとても共感でき、仕事でも例があった方が作業のイメージのミスマッチがなくていいなぁなどと思ってしまいます。そこに自分なりのアレンジを加えるかはまた別の話ですが、、

逆に「みんなで決める」はそこまで身に覚えはなかったのですが、これを日常的に実践できている若者の技量の高さにはびっくりです(難しそうなので、、)

会社に安定を求める若者たち

次は「勤務先にひたすら安定を求める」という特徴についてです。

少し前に 「最近の若者は課長にすらなりたくない」という統計データが広まったそうですが、それはすでに時代遅れであると指摘されています。

日本生産性本部が実施した「どのポストまで昇進したいか」という質問に対し、10年前と比べ最も増加した答えが「どうでもよい」であるということが明らかとなりました。

若者の心境の変化として、出世したくないのではなく、もはやどうでもいいということになります。

このことは若者が会社に求めるものが変化しているというデータからも読み取れます。
若者が会社に求めるものは、10年以上前では「自分のやりたい仕事 」が多数派でしたが、今では「安定している会社」が主要な項目となっており、特に男子がこのように考えている傾向にあると言います。

つまり、「若手が活躍できる会社」を志望する学生は驚くほど少なく、その背景には「若手が活躍できる」=「ブラック企業」の図式が、若者の頭に存在することがあると指摘されています。

ここで、現代の若者の言う「安定した会社」にはメンタル的な安定も含まれています。

現在の大学生の多くは、やりたい仕事や働きがいを、安定の対極にあるものと捉える傾向があり、やりたい仕事を求めることは、意識の高い人間のすることであって、すなわちそれは安定した仕事ではない。といった考え方があるとのことです。

主体的な学生が欲しい企業とのミスマッチ

若者は企業に安定を求めるとのことでしたが、逆に企業は若者に何を求めているのでしょうか?

2018年に日本経団連によって行われた調査で「企業が学生に求める資質・能力・知識」のトップにランクインしたのは「主体性」でした。

このことから、企業と学生の間での次のようなミスマッチが想定できます。

企業
「主体性」や「実行力」を備える学生がすごく欲しい。(でもそんな学生に対して成果型報酬制度や個人の希望に即した配属は行っていない)

学生
「主体的に動いてほしい」と言ってくる企業は何だか搾取してきそう。そもそも今まで特にやりたいこともなく過ごしてきたし、今さら主体的に動けと言われても反応できない。自信もないし、そういう企業は避けておこう。

プライベートを充実させたいは本当?

仕事に安定を求め、出世はどうでもいいと感じている若者は一体何を重視しているのでしょうか?

こういう議論の際によく取り上げられるのが「プライベートの充実」ですが、実際にはそうではないと本書では言われています。

プライベートの充実というと、趣味に打ち込んだりと言ったことが想像できますが、現代の若者は趣味が多いわけでもないことが明らかになっています。
実際に多くの若者が余暇にしているのは「ゲーム・Youtube・Amazonプライム・Netflix・SNS」です。

これを趣味というなら、、といった感想もあるかと思いますが(特にゲーム)、これらは全て主体的に取り組むことというよりは、受身的に時間を費やす類のものであり、「特にやりたいことなんてない」という若者のリアルが垣間見えています。

社会貢献したい若者たち

最後は「社会貢献したい思いはある」という特徴についてです。
ここまでで、若者の特にやりたいことがないというリアルを見てきましたが、そんな中、就職活動で若者たちが仕切りに口にするのが、社会貢献だと言います。

ここで「社会貢献」というキーワードを踏まえて若者たちの仕事観をまとめる次のようになります。

  • とにかく人目は気になるし競争もしないけど、自分の能力を活かしたい
  • そこそこの給料をもらい残業はしないけど、自分の能力で社会貢献したい
  • 自ら積極的に動くことはないけれど、個性を活かした仕事で人から感謝されたい
  • 社会貢献といっても、見ず知らずの人に尽くすとかではなくて、とにかく「ありがとう」と言ってもらえる仕事がしたい

一般に社会貢献というと、自ら積極的にボランティアに参加したりする姿をイメージしがちですが、彼らにとっての社会貢献とは「貢献する舞台を整えてもらった上でのもの」であると言います。

それは「貢献」とは呼ばないのでは?と思ってしまいましたが、こういう言葉の背景が正しく理解できないと、いつまでも若者と会話ができないなとも感じてしまいます。

「貢献する舞台を整えてもらった上での」社会貢献というのは実際のデータにも現れており、若者の間での献血率が著しく減少しているなど、実際にボランティはしていないことが明らかになっているようです、、

感想

率直に、新鮮な事実が多くて読んでいて面白かったです!少しネガティブな紹介の仕方になってしまいましたが、自分もあと10年くらい遅くに生まれていたら、同じような考えを(少なくとも今よりは多く)持っていたんだろうなと感じました。

企業と学生のミスマッチなど、冷静に考えると結構恐ろしい話なので、良いか悪いかは別として、これからの世代がどんなことを考えているのかを我々の方から理解して、歩み寄る姿勢を持ったまま、歳をとっていきたいと思います😇

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